ディフェリンゲルはどのようにしてニキビを治しているのか?

ディフェリンゲルはアダパレンという化合物が主成分(有効成分)のニキビ治療用のゲル状軟膏です。
ディフェリンゲルにはこの有効成分アダパレンが0.1%含まれています。
海外ではさらに濃度の高い0.3%アダパレン含有のディフェリンゲルが治療に使用されています。

アダパレンとは、レチノイド(ビタミンA誘導体)と似たナフトエ酸誘導体です。(誘導体とは何らかの目的で、もとの成分の分子構造の一部に化学的な改良を加えてものを言います)

アダパレンの構造式

レチノイド(ビタミンA誘導体)の外用剤としては、美容皮膚科で処方するトレチノイン(レチノイン酸)が有名です。この薬は、残念ながら保険適用薬ではありませんが、トレチノインは、角質剥離、表皮ターンオーバー促進、皮脂分泌抑制、繊維芽細胞を活性化など、様々な効果を持つ有用な薬です。

そのため、美容皮膚科でニキビのほか、しみやたるみ、毛穴などの悩みに対して、広く処方されています。

(ちなみに化粧品に配合されるレチノールは、このトレチノインとは違う成分です。医師の診察なしで使用できるように効果をずっと低く抑えています)

ディフェリンとトレチノインの違いについて

ディフェリンの有効成分であるアダパレンもトレチノインのビタミンA誘導体と似た構造を持ちます。
(トレチノインの第1世代に対し、アダパレンは第3世代の合成レチノイドと言われ、同じ濃度で較べたならば、アダパレンのほうが効果が早く、副作用が少ないとされています)

トレチノインが肥厚した角質を剥離して毛穴の詰まりを積極的に解消するのに対し、ディフェリンは顆粒細胞から角質細胞になることを抑制して、ニキビを予防します。
しかし、実際の臨床経験からディフェリンもトレチノイン同様に角質剥離(いわゆるピーリング作用)があると実感しています。

ただし、ディフェリンの効きは、濃度調整のできるトレチノインやその他のピーリング剤と較べて弱く、十分な効果を発現するまでに時間がかかってしまうことも確かです。(ディフェリンゲルは日本では0.1%のみですが、海外では0.3%配合の薬も使用されており、より効果的な臨床実績を挙げています)

保険薬として認可されるには、多くの症例に低いリスクで処方できることが求められるため、現状で0.1%のディフェリンゲルのみということも仕方ないともいえるでしょう。

前述の通り、美容皮膚科クリニックで使用されるピーリング剤は患者さんの症状に応じて濃度調整して処方されています。その点、0.1%ディフェリンだけでは、早く効果を出したいときやなかなか効果が出にくい患者さんには十分な対応ができず、片手落ちの印象はぬぐえません。
もし保険薬にも患者さんの症状に応じた選択肢があれば、治療の成果もさらに高めることができると思います。将来は0.3%ディフェリンゲルも保険薬として認可されて欲しいと思います。

追伸
ちなみに製造元であるガルデルマ社の担当者に問い合わせたところ、前向きに検討はしているとのことでした。今後、ディフェリン0.1%が広く認知されれば、0.3%も認可される日も来るかもしれません。

ディフェリンの実際の使い方について

回数1日1回 就寝前
容量塗布量の目安は顔全体で大人の人差し指の第一関節の長さ
(1FTU=0.5g)
1ヶ月に1本使い切るのが目安です。
両頬、額、顎に置き、それぞれの部位で、塗り広げてください。
角質の薄い目の周囲・唇・小鼻など粘膜に近い部位は避けてください。
洗顔後、(ビタミンC誘導体ローションを塗り)次に低刺激保湿化粧品で保湿後、必ず日焼け止めを塗ってください。
洗顔後、(ビタミンC誘導体ローションを塗り)次に低刺激性保湿化粧品で保湿後、ディフェリンを面で幅広く塗ってください。

*塗る順番についてディフェリンは、余計なものが塗られていない素肌に使用したほうがよいのではないか?という質問をいただくことがあります。

これは最後にディフェリンゲルを塗るのは薬剤を的確な部位に留めるためです。
保湿クリームなどをディフェリンの後にすると、クリームによってディフェリンが広げられてしまい、本来ならば不要な部位にまで薬が塗られてしまいます。逆に言えば、必要な部位に塗ったはずのディフェリンが違う部位に拡散してしまうのを防止しています。

アダパレンは、ビタミンA誘導体と作用機序も似ているため、ニキビ以外の“美肌効果”も期待されます。実際にニキビ治療に半年以ディフェリンを使用し続けている患者さんは明らかにきめが整い、毛穴が目立たなくなっています。(症例写真のページをご覧ください)しかし、ディフェリンゲルはニキビ治療薬として厚生労働省の許認可を取得しているため、それ以外の効果がたとえあったとしても、謳うことができません。もちろん、ニキビ治療以外の目的(病名)で保険薬として処方することもできません。